土手の伊勢屋


三ノ輪駅徒歩15分程、明治22年創業の天麩羅屋さん「土手の伊勢屋」。 吉原の遊郭の入口であった吉原大門の近くに位置し、お隣の桜鍋の「中江」さんと共に明治からの創業で当時の匂いを色濃く残す風情のあるお店です。本日、私がお邪魔したのは有名な天麩羅が目的というよりは、昭和2年に建てられ現在も店舗として使用している建物を拝見することが主たる目的です。その建物は「登録有形文化財」として登録されているとても貴重な建物です。現在東京都の建造物で「登録有形文化財」に指定されているのは263件あり、お隣の「中江」さんと共に 2010年9月に登録がされています。2軒並んでの登録は珍しいのではないでしょうか。国指定文化財のデーターベースには次のような解説文が載っています。『土手通りに西面して店を開き、東と南も街路に面する。間口4.6m奥行10mの木造2階建、入母屋造妻入桟瓦葺。外壁は下見板張、軒下と妻面は漆喰仕上げとする。1階を店舗、2階を住居とする。正面のカウンターなど、往時の天麩羅屋の佇まいを残す。』それにしても素晴らしい建物です。 住居としての使用の為に必要不可欠な日よけなどが付けられたり、一部手直しがされたりはしていますが、ほぼ当時のままと言っても過言では無い状態ですね。以前ご紹介した千石のお蕎麦屋「進開屋」さん同様、昭和好きの私にはたまりません。解説文に有る様にお店の入口、左側には往時の天麩羅屋さんを思い起こさせるカウンターが存在し、恐らく当時はこのカウンター越しに「オヤジ!海老を揚げてくれ!」「ハイョ!」等のやり取りが交わされたのでしょう。そんな事を考えるだけで思わずニヤニヤしてしまいます(笑) もちろん店内もかなり良い雰囲気です。天丼はイ、ロ、ハの3種類、本日はハをお願いしました。運ばれてきたそれを見てビックリ!!丼ブリからほとんどがはみ出ている状態で、ボリューム満点、ゴマ油の香り高いまさに江戸前の天麩羅という感じです。見た目から少ししつこそうだなと思われましたが全くそんな事が無く、少食な私でもペロッと最後まで美味しく頂け、その後も胸焼けなど一切しませんでした。 この雰囲気でこの天麩羅は本当にたまりません!!まさしく 雰囲気、味、接客の3拍子揃った名店です。ご馳走さまでした。