木村酒店


JR鹿児島本線、戸畑駅徒歩3分程、角打ちの「木村酒店」さん。「田中屋」さんを堪能し、フライトの時間も近づいて来たのでそろそろ博多に戻らなければと思い戸畑駅に戻る途中「木村酒店」さんが目に止まりました。外から見ただけでは営業されているのかどうかさえ分からない怪しい雰囲気ですが、思いきって中へ入ってみました。中はカウンターがZ型に店内に組まれており角打ち中心のお店です。息子さんでしょうか、優しそうな男の方がお一人で店番をされています。「宜しいですか?」「どうぞ、何処でもお好きなところで。」本日角打ち6軒目、カロリーを気にしてスタイルフリーを頂きます(笑) 「観光ですか?」「えぇまぁそんなところです。」「今日は戸畑のお祭りなんですよ。僕も昔は出ていましたが最近はめっきり行かなくなりました。六時半ぐらいからですよ。」「いえいえ、お祭りを見に来たのでは無いんですよ。実は仕事で東京から出張で来ていて、今日は休みをとって北九州の角打ちを巡っているんですよ。こういうお店が大好きで!」「そうなんですか、珍しいですね。」「戸畑もすっかり寂れてしまいましたよ。昔はとても賑やかな街で、この一帯は繁華街で裏にはストリップ劇場、向こう側には赤線街もあったんですから。」お聞きしたところご主人は私と同じ年齢とのこと、戸畑の昔話を聞かせてくれました。「僕が小さい頃は、テレビで見るような船上生活者の方々がすぐそこの海で暮らしていて、船のマーケットまで有りましたよ」「えっ〜日本にもそんなところがあったんですか!ビックリですね。」「この酒屋も昔は何十人も雇って、戸畑ではかなり手広くやっていたそうなんですが、区画整理とかでここに移るの3回目ですよ。この前の道を拡張するとかでまた立ち退かなければならないのですが、店をたたむのに良い機会ですよ。このあたりの角打ちは代々続いたお店を自分の代で灯を消したなんて言われたくなくて必死なんですよ、うちは区画整理という理由があるから本当に有り難いですよ。」いやぁ〜色々な悩みや出来事があるのですね。 「うちの倉庫には昔の色々なものが眠っていて、ある人はそれを店先にきちんと飾ってなんて言いますが、僕は今のままが好きなんです。そうそう昔の写真が有りますよ!」と言って写真を見せて頂きました。「この3輪バイクは戸畑で一番最初に買ったらしいですよ!」「この写真凄いですね、しかもこんなに綺麗に保存されているなんて凄いですよ!この写真を引き伸ばして額に入れてお店に飾るだけでも…」「そんな気更々有りません。今のままが良いんですよ。」確かにそうかもしれませんね。色々な理由があるにせよ、自分の代で「木村酒店」の灯を消すことになるであろうご本人の言葉にはかなりの重みを感じました。フライトの時間が迫って来ました。「ご主人、色々と有難うございました。頑張って下さい、また伺います。ご馳走さまでした。」外に出てお店の写真を撮らせて頂き初めて気が付きましたが、サッポロビールの看板の文字が木で出来ています。ビックリですね。本日はとても充実した時間を過ごすことが出来ました。有難う御座いました。