昭和食堂




東急多摩川線矢口渡駅徒歩10分程、創業1957年(昭和32年)その名もズバリ「昭和食堂」さん。ある日の休日、家族は全員外出ゆえ、嬉し楽しや一人でのんびり(笑)此処ぞとばかりに中々伺えないお店にいざ出陣と向かったのが「昭和食堂」さんです。矢口渡駅より炎天下を汗だくになりながら歩くこと10分程で到着、その佇まいたるや驚きの一言、タバコの自動販売機と販売窓口に挟まれた扉一枚がお店の入口、「食堂」と染め抜かれた暖簾が掛けられて無ければ唯の住宅にしか見えません。中の様子も全く見えずかなりハードルが高そうですが、思いきって突入すれば、何とも素晴らしい昭和風情、左手奥に厨房を構え、カウンター5席にテーブル2卓のとてもこじんまりした店内は長い年月を経てかなり良い感じの飴色に変化した木の色が印象的です。先客は無く、私の両親ぐらいのご夫婦がマッタリと寛がれていました。「いらっしゃい。」テーブルにお邪魔して瓶ビール(大瓶600円)をお願いすれば、嬉しいことに麒麟ラガー、カラッカラの喉に染み渡る苦味が堪りません。突出し(無料)のかぼちゃの煮物も有難い限りです。「写真を撮らせて頂いて良いですか?」「ええどうぞ、時々見えるのよ同じような方が。」「いやぁ〜こう言う昭和な感じが好きな人にはこの雰囲気は堪りませんよ!」少しご夫婦とお話をする事が出来ました。昭和32年にこちらに越されて来て食堂を始められたとのこと、この建物は当時珍しい建売住宅で周旋屋さんから購入したそう、久し振りに耳にしましたよ「周旋屋さん」と言う言葉(笑)当時二階建ての住宅はとても珍しく、なんと矢口渡の駅から見えたそうです。また、その頃は高度経済成長時代、周りに大きな企業や研修所も有ってか、目が回る程の忙しさに免許の書換えすら行けなかったそう、「そんなに凄かったのですか。」「ええ〜、今の雰囲気からは想像も出来ないでしょう。業績が厳しくなって殆どがマンションになってしまったからね。」寂しそうな表情が印象的でした。「あれ、これ栓抜きですか?」「良く気が付いたわねぇ、昔のコカコーラの瓶を入れていた冷蔵庫が駄目になった時に、お父さんが栓抜きの所だけ外してここに付け替えたのよ。」「ああ〜、だから赤いカバーが付いているんですね(笑)」ひとつひとつがこのお店の歴史なんですね。「オムライス(500円)を頂けますか。」とお願いすればお父さんが厨房に入り、手際良く鍋を振る音が聞こえて来ました。「はい、お待ちどうさま。」と運ばれて来たオムライスはケチャップの掛けられた昭和なオムライス、味も申し分ない美味しさ、これが500円とは嬉しい限りです。「ご馳走さまでした。色々とお話を聞かせて頂いて有難うございました。」「ちょっとこれ持って行きなさい。昔かき氷を出していた時の器だけど、この形が懐かしいでしょ。」「いやいやそんな貴重なもの悪いですよ。」「良いのよ、ねっ!」と渡された器は脚の付いた可愛い器、有難く頂戴しました。「昭和食堂」さん、歴史のギッシリ詰まった素晴らしい食堂です。ご馳走さまでした。

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