きぬ川




JR南千住駅徒歩10分程、日本を代表するドヤ街の一つ、山谷の大衆食堂「きぬ川」さん。こちらは予ねてから伺いたいと思っていた大衆食堂のひとつ、念願叶ってのお邪魔となりました。山谷は東京の中でも飛び抜けて異質な地域、一般の方は近寄り難い ( と言っても、わざわざ近寄る理由が有りませんが(笑)) 雰囲気がプンプン漂っていますが、最近は海外からのバックパッカーの方々にも安くて便の良い宿泊場所として人気が高まり、小綺麗な安宿も散見される様になって来ました。とは言っても今でもドヤ街と言われるだけ有り、日中から赤ら顔でフラつく方や道路でグッスリとお休みになる方、突然大声でお叫びになる方など、山谷ならではの光景は変わることは有りません。それでも強いて言えば山谷にも高齢化の波が押し寄せ、全体的にはおとなしくなって来た事でしょうか。山谷を貫く「いろは商店街」も半分程シャッターが降りてしまい、その前では公然と花札に興じる光景にも出会うことも・・・南千住から通称吉野通りを歩き、4階建ての日本堤交番の角を曲がれば「いろは商店街」、その商店街入口手前に「きぬ川」さんは静かに佇んでいます。既にそこは山谷の中心地、広い通りにはおじさん達が群れていることも多々有って近づき難い時も数知れず、暖簾が掛かっているのを確認し一直線に目指しました(笑)「大衆食堂 きぬ川」と書かれた青いハザードに「御食事処」と抜かれた真白な暖簾はどちらも比較的新しい感じですが、アルミの素っ気無い作りの入口と相まって、如何にも大衆食堂の雰囲気を醸し出して良い感じです。店内は奥に広い厨房を構え、手前にテーブル3卓のこじんまりとした造り、フロアはお母さん、厨房はご主人とご夫婦お2人で営まれているよう、お2人とも結構なお歳らしく腰が曲がっていらっしゃいます。先客はお一人、テーブルに着いてビールをお願いすれば、ひとつひとつをユックリとこなす故、ビールが出て来るまで結構な時間が掛かりますが、この雰囲気でこの時間の流れはここでは当り前のこと、決して嫌な気持ちにはなりません。ガラスケースにはオカズの数々、ご常連さんは先ずそのケースを覗き込み、オーダーをしてテーブルに着くのが普通のよう、私はアテに「豚肉炒め(400円)」をオーダー、温め直しのオカズも有りますが「豚肉炒め」は一からご主人が鍋を振って作ってくれる逸品、盛りもタップリで味付けも申し分無い美味しさです。驚いたのは持帰りのお客さんが多いこと、ご自分でタッパを持参して詰めて貰う方もいるとは、他の大衆食堂では中々見掛けない光景です。豚肉炒めでビールを愉しんだ後は小ライス(150円)、小豚汁(120円)、白菜の漬物(?) で〆のご飯を頂きます。この豚汁がまたまた大ヒット、具沢山で味も良くご飯が進みます。 お腹は十分満たされお会計は1100円とのこと、計算が合っているのか定かでは有りませんが、旨くて安くて、とても素晴らしい大衆食堂、そこら辺りのお店なんか足元にも及びません。「ご馳走さまです。」とお店を出て外観を撮影していた時に山谷らしい出来事に遭遇、「おい!何撮ってやがんだ!パチパチ撮るんじゃねぇぞ、こらぁ!」と、お酒でとても気持ち良くなったであろう方が、私に向かって声を掛けているよう、「いやいや、私はあなたを撮っているのでは無く、建物を撮っているんですよ。」と心の中で返答させて頂きました。山谷の「きぬ川」さんとても素晴らしい大衆食堂、末長く頑張って頂きたいですね。ご馳走さまでした。
きぬ川」 食べログ